「定借以外は契約行為のみなら可能」
3年前までは、不動産の契約は法律により書面でしか行えないというのが業界内の常識であった。私自身、電子契約サービスを紹介した不動産会社の方から、「よく勉強してから来てください」とけんもほろろに面会の途中で退席させられたことも。それがいまでは、不動産の契約は一部の契約形態を除き電子化できることは広く認知されつつある。
しかし電子契約の具体的な手順や期待効果、運用上の留意点について体系的に解説したガイドラインはない。私自身はこれまで不動産売買契約を電子化する方法、その契約ファイルを用いて不動産登記手続きを行う方法のほか、賃貸契約を電子化する方法を模索し、先進的な不動産会社の方々と実際に契約の電子化を実践してきた。また、不動産に関する契約を行うためのサービスについても研究を重ねている。まだまだ勉強中の身ではあるが、これまでの私の経験や知見を元に全6回に渡り、主に不動産賃貸契約の電子化について現状をレポートしたい。
不動産賃貸契約の電子化を語るには、はじめに法律に触れる必要がある。現在の不動産賃貸取引に関連する法律で、契約の手段を定めるのは、借地借家法22条(定期借地)と同38条(定期借家)だけである。定期借地契約と定期借家契約は書面で行わなければ成立しないと条文に明記されている。不動産賃貸契約が書面でしか行えないという方は宅地建物取引業法37条を理由に挙げる。しかし同法で定めるのは取引に関する書面交付であり、契約の手段は定めていない。
これは国土交通省の見解でもある。但し、宅地建物取引業法35条(重要事項説明書)や宅地建物取引業法37条(書面交付)をPDFファイルや電子メールで交付することは認められていない点にはご留意いただきたい。一方、宅地建物取引業法が適用されない更新契約や駐車場の契約、貸主と借主が直接行う賃貸契約などはこの限りではない。
では、不動産賃貸契約を電子化する目的や効果はどのようなものか。次回はそのメリット、具体的な手順や留意点を解説したい。
全国賃貸住宅新聞 2018年2月12日号(No.1306)
「来たれ!!電子契約元年」 IMAoS開発責任者 小野誠人
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